昼休み、前の席に座っている葵の背中に話しかける。
「葵、今日のお昼なんだけど…」
「なーに?まさか神崎先輩にお昼誘われた?」
「さっきLINEがきて…あの、ごめんね?」
「謝らないでいいから!ほら、いってきな?」
「うん、ありがと!」
あたしはお弁当を持って3年生の教室へと向かった。
3年1組…
ここだ……
3年生の教室にはもう何回か来てるけどなかなか慣れないなぁ…
年が1つ上なだけなのにどうしてこんなに大人に見えるんだろう…
同じ造りをした教室なのにあたしたち2年の教室とはまるで世界が違うように見える。
それにしても…
先輩どこ…?
中には人がたくさんいるせいか先輩が見つけられない。
ふぇぇ…
見知らぬ土地に1人なんて心細いよぉ〜
先輩早くあたしを見つけて〜〜〜!!
「あれ?璃愛ちゃん?どしたのこんなとこで」
入り口で半ベソをかいているあたしに声をかけてきたのは…
「霧島先輩!」
そう、今朝葵との会話の中にも出てきた神崎先輩の友達、霧島先輩だった。
霧島先輩はイケメンだけどすごくチャラい。
髪色はちょくちょく変わるし制服は着崩してるし、耳なんてピアスの穴いくつ空いてるの?ってくらい。
喧嘩もよくするみたいで顔に傷をつけて学園に来ることもしょっちゅうある。
煙草吸ってるところを見たって人も結構いるし。
とにかく何回も生徒指導を受けたりと、学園で1番問題視されている。
神崎先輩と付き合うようになってから自然と話すようになったけどそれまではとても怖くて目も合わせられないほどだった。
ていうか今でも若干怖い。
そんな霧島先輩が神崎先輩と友達なのがちょっと疑問に思う。
だって神崎先輩はチャラくないし喧嘩だってしないし生徒指導も受けたことなんてきっとない。
対照的な2人なのになんで仲良いんだろう…
「あ、颯斗探してんの?こんなとこに突っ立ってないで中入ればいいのに」
「いやぁでも…」
「いいからいいから」
「え!?ちょっ、霧島先輩!?」
霧島先輩はあたしの腕を掴んで強引に教室に引きずり込む。
いやーーーーー!!!!
あたし3年生の教室入っちゃった!
今までは廊下からそっと覗くことしかできなかったのに!
「颯斗〜、璃愛ちゃん廊下に突っ立ってたから捕獲してきたぞー」
ヒィッ!!!!!
そんな大声で…!!
「璃愛!お前捕獲ってまた強引に連れてきたんだろ…」
「先輩っ!!」
先輩を見つけてさっきまでの不安が一瞬で消え去った。
「なになにー?神崎くんの彼女〜?」
「めっちゃ可愛いじゃん〜」
「てか年下と付き合ってたんだね〜」
神崎先輩に続いて派手な先輩たちも集まってきた。
ちょっとメイク濃いけど美人だなー…
それに年上ならではの色気を感じる…
「神崎くん、付き合ってもあんまり構ってくれないでしょ?」
「え…?」
「おい、変なこと言うなよ」
「結構有名だよね?神崎くんの元カノみんな言ってるよー」
「そう、なんですか…」
元カノ…
いたんだ……
…知らなかったな……
どうして今まで元カノの存在を気にしなかったんだろう…
先輩に元カノの1人や2人いて当然なのに。
「璃愛、こいつらの言うこと気にしなくていいから」
先輩はあたしの顔色を伺いながら口を開いた。
先輩に気を使わせちゃだめ…
「あの、そんなことありませんよ?先輩、すっごく優しくしてくれますし、今日だってお昼誘ってくれてこれから一緒に食べるんです」
「え…あ、そうなの?今カノには溺愛してんのね〜?」
「うるせぇな…璃愛、場所変えて昼食おっか」
「あ、はい!」

