「おはようございますっ」
「…おはよう」
目を覚ますと彼がリビングにいた。
こんなに眼帯を取っているのは久しぶりだ。
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「…お風呂には入らないこと」
「えっでもそしたら…あっ、別に裸見れないとかそう言うんじゃないんですよ!ほんとですよ…!でも全然会える時間がないから…」
「…じゃあリビングでは外すから。」
そう言うと彼はわかり易く喜んだ。
他にもいくつかの約束をした。
お互い深入りはしないこと
私が一人になりたい時はそっとしておくこと
ただの話し相手だということ
彼は全てを承諾した。
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「そういえば僕なんて呼んだらいいですか?あ…これも深入りになっちゃいますかね」
「…真凛。」
彼はバカみたいに分かりやすい。
犬なら尻尾を振って飛びかかって来ているだろう。
「真凛さんっ」
犬を一匹飼うのと同じ
そう、ペットだと思おう。
「私はなんて呼んだら?」
「あ、名前すら…」
ヘラっと笑う彼の目はどこか寂しそうだった。
慰めることも出来ず
ねえ とか あんた とか
私は彼を適当に呼んだ。
「なんであんたはここにいるの?」
「うーん…僕も分からないんですよね。目が覚めたらここにいて、多分僕が住んでたんですけど。家具とか全部…はは、」
「…聞いてごめん、」
私は彼に触れることは出来ない
彼も私に触れられない
特に気配も感じない
ただ見えて聞こえる
言葉にすればこんなに都合がいいだけに思えてしまうけど
現実は虚しいだけの残酷なものだ。