「お疲れ様でした」

バイトを終えて家へと帰る。

私の日常生活は

眼帯と大学とバイト

この三つで成り立っている。

特に何も望まない

生きているどころか

死んでいるも同然で

ただ死ねないから

“生かされている”だけだ。


家に帰り、お風呂へと向かう。

「あのっ、…」

彼の言葉を無視して

洗面所で脱ぎ始める。

「すみませんっ、み、見てませんからっ!聞こえて…ますよね…?」

彼は後ろを向きながらそう言った。

その言葉も無視してシャワーを浴びる。

洗面所に戻ると彼は土下座していた。

え、なに…?

「あの…僕知らぬ間に何かしちゃってたならごめんなさい…ほんとにすみません。」

「…別にあんたが何かしたわけじゃない」

そう答えると彼は顔を上げ

頬を紅く染めながら何かブツブツと呟いては

一人でアワアワとして洗面所から消えた。



眼帯からアイマスクに付け替える時

そこに彼はいた。

「…お風呂の事もごめんなさ…あっ、アイマスクちょっと待ってください…!五分だけ!いや、三分でいいんです」

「…一分ね」

そう言うと彼はヘラっと笑った。

「ありがとうございます。…さっきのどういう事ですか?」

「そのまんまの意味。私はあんたが期待してるような事はできないし、期待されても困るし今後関わる気もない。」

彼は不思議そうな顔をして口を開く

「期待…とは…?」

「…だから、どうせあんたはやり残した事を〜とか言い出すんでしょ?あとはあの人にこの思いを伝えてくれとかさ。」

彼は一瞬寂しそうな顔をしてはヘラっと笑った


「僕…記憶がないんですよね。だからそういう事は望みません。ただ、ここにいる間だけ…暇な時だけでいいんです。僕の話し相手になってくれませんか?」


「…もう一分経った。」

あまりに真剣な眼差しは

綺麗すぎて

もうこの目で出会うものとは

関わらないと決めたのに…


「えっ…」

彼は寂しそうに俯く

「…お風呂には入ってこないこと」



それが私達の“同棲”の

始まりとなった。