ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~

それから、数ヶ月後。


「すげぇ、緊張するんだけど」


ピシッとネクタイを閉めたハルが、不安気に口にする。


「もし反対されても、俺頑張るから」

「されないよ」

「わからんねぇだろ。1人娘だし」


結婚の挨拶を前に珍しく弱気なハルが、少しだけ可笑しい。


「ハルなら、大丈夫だよ。だって、あたしが選んだ人だから」


笑いかけるあたしに、ハルは小さな笑みを浮かべる。


「好きだよ、玲」


息をするかのように口にしたハルの言葉を、今じゃ昔のように上手く流せない。


「赤いよ、玲」

「気のせいだよ」


見られたくなくて、ハルを置いて歩き出す。

後ろからクスクスと笑い声が聞こえたかと思うと、気付けばハルは隣に並んだ。