ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~

立ち止まっていたのは、あたしだけなのかもしれない。

そしてハルは、時間とともにちゃんと前と進んでいたのかもしれない。


「あのさ、玲」


妙に緊張したような面持ちのハルに、嫌な予感が頭を過る。


「ねぇハル。好きな子でもできた?」


まるで牽制でもするかのように、あたしは話を変えた。


「なんで?」

「何となく。あたし達もいい年だし、それなりに好い人とかがいても、おかしくないでしょ?」

「本気で言ってる?」


真っ直ぐに見つめてくるハルの瞳は、怒っていた。


「ハル?」

「玲は、俺を突き放そうとする。昔も今も、変わってないね。その度に俺がどんな気持ちか、きっと玲にはわからないんだろうな」


切なそうに笑みを浮かべるハルに、チクチクと胸が痛む。