ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~

大学から一人暮らしを始めたハルの部屋に、こうやって上がったの初めてだった。


「引っ越し?」


部屋に置かれた段ボールを見つけ、何となく尋ねる。


「うん。ごめんね、散らかってて」

「ううん。転勤?」

「いや。強いて言うなら、気分転換」


気分転換で、引っ越し。

何か、あったのだろうか?

でも、それを聞く権利があたしにはあるのだろうか?

ハルのことだから、きっと正直に話してくれるだろう。

良いことでも、悪いことでも。

だけど、ハルの心の中を見るのが怖い自分がいる。

この曖昧な関係に満足し、あたしは変化を恐れている。

気付けば、25(歳)。

あたし達の間には、確実に時間は流れている。