「やめて、晃一くん。あたし達が勝手に心配し過ぎただけだから」


お母さんは、晃一に頭を上げるよう促す。


「でも、何があったの?病院に来るほどの怪我って」


お母さんの疑問は、最もだ。


「それは・・・」

「落ちたの。無断外泊しちゃって、急いで帰ろうと思ったら、階段から落ちちゃって。で、彼が助けてくれたの」


晃一の言葉を遮り、答える。

嘘を付くときは、本当のことと混ぜるとバレ難いと何かで見た記憶がある。

だから、壱也に助けられたことを織り混ぜた。


「そうだったの?娘を助けて頂き、ありがとうございました」


律儀に、お母さんは壱也に礼を言う。

壱也は困惑しながらも、あたしの嘘を正すことはなかった。