ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~

そんなタクの顔を、あたしはジッと見つめる。


「優しいんですね」

「そんなことないよ」


タクは照れたように、はにかむ。

そんなタクに、自分でもわかるくらい冷たい声で言い放つ。


「でも誰にでも優しいと、本当に守らなきゃイケない人がわからなくなりますよ」


そんなあたしに、タクは少し驚いたように瞳を揺らした。


「何の話?」


そこに割って入るように、千郷が戻って来た。


「ただの世間話。あたし、トイレ行ってくる」


そう言い残し、あたしはその場を後にした。

別に、トイレに用はない。

ただ、あの場に居たくなかった。

不器用だけど、曇りのない2人の気持ちが・・・

歪み、荒んだあたしのことを劣等感で覆うから・・・