奏多くんはもちろんすぐに
来てくれた。
いつもの白いセダンで。

車の音が聞こえて
私はすぐにドアから飛び出した

「ねえ会いたかった」

彼の首筋に腕を回して
抱きついても
腕を回し返すどころか
なにも言わなかった。

「一緒に寝てくれる?」

「俺、明日仕事だって」

「お願い」

首筋に顔を埋めて
消え入りそうな声で呟くと
大きなため息を吐いて

「わかったよ」

と力なく答えた。

あぁどうしてだろう。
彼の困った顔を見ると
もう私のものじゃないんだと思うと
また手に入れたくて仕方がなくなる
私が振ったのに
自分のものじゃなくなったとたん
またすぐに欲しくなる。

なんて天邪鬼なんだろう私は。