「刺客だ!!すぐに追え・・・急げ!」

真夜中の王宮。
王太子の居所のある一角で、その事件は起きた。

「近衛兵1兵団は、レベル4で警戒。殿下の部屋の出入りを希望する者がいたら私へ通せ。
周囲に気づかれないよう、兵の配置をひそかに変更し、要所に目を光らせよ!キエルは殿下の治療を・・。
くれぐれも周囲に悟られぬよう対応するのだ、急げ!」
「かしこまりました。第一兵団・第二兵団は後ろに続け・・・、クラウス様もお気をつけて」
「私の事は心配せずとも大丈夫だ・・・警護を頼む」

事態の収拾を収めるべく、的確な指示を出している『この青年』

アイスブルーの瞳からは冷たい光が放たれ、激しい怒りを抱えていた。

迅速な判断と的確な指示、そして兵の再編成。
あっというまに指示を出したこの青年は、王太子付秘書官のクラウスである。

第三王子周囲は数日前より、怪しい空気に包まれていた。

その怪しい空気とは、『第三王子の暗殺』である。

嫌がる王子を説得し、周囲の警備や居室など、厳重にし、いつも以上に警戒していたのだが・・・。
わずかな隙を狙って、敵は襲撃してきたのだ。

王族にとって常に付きまとう問題。それは自分自身に向けられる刃。

悲しいことだが、敵の襲撃は内外に常にある。
身内であろうが、なかろうが、いつの時代にも起きることである。

王位継承権=この王国の象徴
そして、絶対的な権力をもつ存在であり、この国を動かす絶対的な存在。、

ゆえに人は権力を欲し、それを得るために争いを起こす。
それが奇襲であったり、場合によっては毒物を使用したものであったり・・・。

方法は様々で、日々変化していくものでもある。
ゆえに、全ての可能性を疑い、最大限の予防処置を行う。

執務室~居室、。
ありとあらゆる可能性を考えて、今回も対応したというのに・・・。

(奴ら・・まさかこの手を使うとは・・・。)

守れなかった後悔、そして、苛立ち。
様々な感情が湧き上がり、そしてそれは後悔に、怒りに変化していく。

湧き上がる感情に、クラウスはギリっと唇を噛みしめた。