（まさかここまでとはね・・・。）

正直、彼女の事を甘く見ていたかもしれない・・・。
彼の心の中には、そんな小さな想いが芽生え始めていた。

「わかった。城に戻ったら、すぐに検証しよう。ただしあまり時間はかけられない。それはわかっているね」
「ええ、駄目で元々だから・・・」

クスッと笑いながら、ユリアはそう答えた。

これだけの事を抱えているのに、彼女は怖くはないのだろうか？
自分でさえ、足元がぐらつきそうな感覚を必死に押しとどめているというのに・・・。
彼女の瞳からは、恐れと言う色がまったく見えないのだ。

失敗すれば、後はない。失敗は許されない。

だけど、なぜだろう・・・、彼女からは強い光を感じる。

そして、これから先に『未来』を感じるのだ。

こんな感覚はクラウスにとって初めてのことだった。

だからこそ、もっと彼女の事を知りたくなった。

「君は怖くないのか？何の面識もない王宮の人間が突然来て、詳しい事情はいえない。でも助けて欲しいなんていわれて・・・」
「・・・そうね、怖くなんかないったら、ウソになるけど・・・。」
「普通なら当然だろう・・・？」
「まあ、そうだろうね・・・普通。」