それにしてもパピル草。

薬草の名前を聞き、ユリアは少々首をかしげた。

この季節に、これだけのパピル草の採取はめったにないことだ。

というのも、人の生きる世界には、四季というものが存在する。
そして、自然の恵みにも季節は存在している。もちろん薬草にだって、季節があるのだ。

パピル草は、割と色んな薬剤に使用される薬草の一つだ。けれど、季節が変わると扱いが難しいのが特徴もある。

特にこの季節は、収穫量が減ることや、薬草自体が持つ薬効量が減りるという側面があるから、使うにはそれだけの量が必要となる。

内服薬として使用するとしても、怪我の処置で使う創傷治療薬で使うのだとしても・・・。
この時期は不向きだといえる。

だからこの時期、多くの薬剤師はパピル草を別の薬草で代用して、調合したりするのだ。


薬草には時期がある。
だから薬剤師は入手できる薬草の時期を見ながら、調剤内容を検討し、最適な薬効を得られるよう薬を調合する。

薬草を取り扱う、薬剤商のバルドがそれを知らないはずはないのだけど・・・。


とはいえ、バルドの仕事は納品された薬草を売るのが仕事だ。

そんな彼に、『何に使うか?』といったことを詮索しても、聞くだけ野暮だろう。

無理を承知で引き受けているということは、それだけ重要な顧客からの依頼であるということなのだから。

薬剤師をしていると、依頼された内容に対して、実際にどうつかうのか・・とか、
ついつい無意識に考えてしまうもので・・・。

父がいた頃は、助手として父の指示の喪と動いていたから、あまり気にならなったけれど。
今は一人で工房を切り盛りしている。

だから自分のした行為が有効であったのか?とか・・・。いろんなことが気になるようになってきたのだった。

(こういうのを、職業病というのかしら・・・。)

ユリアは心の中でそう呟いた。