下町から王宮までは、急いでも一時間程度はどうしても掛かってしまう。

その間に対策を考えようと、二人はさっそく情報交換を開始した。

クラウスは開示できる事件の概要を説明し、キエルから預かった『レシピ』を手渡した。
ユリアはそれを受け取り、内容を確認すると、持っていた研究ノートや薬学辞典をぱらぱらとめくり、成分の内容と効果について把握していった。

その過程で、ユリアは妙な違和感を抱いた。

レシピの内容が何だか変・・・。
というか、疑問の思わないほうがおかしい。

「この薬は、大衆向けに作られた内容ではないようですね・・・。殿下の体質に合わせて調合したものに思いますけど・・・何か妙ですね?」
「妙?その根拠は・・・?」
「他の薬草との組み合わせを考えると、男性ではココ草は加えないんです。それにレジン草の量が不思議というか・・。殿下は男性だし・・・変だな・・」
「変・・・?何処が・・・」
「・・・根拠がないので・・やめときます・・」

ユリアはため息をつき、一旦そこで話をやめた。

少ない情報の中で彼女が導き出された結論。
それは、通常なら『あり得ない』ことだった。