でも、確かに父は、何かの研究を暇を見つけては続けていた。
そして、その研究結果と記録をユリアに書きとめさせていた。

どれもこれも当時の理解の範疇を超えた研究であったが、その内容は非情に興味深いものであった。

父はこの研究を完成させることなく、この世を去った。
しかし、内容が興味深いだけに、ユリアはひそかにその研究を引き継ぎ、暇を見ては、進めていたのだ。

ただし、研究は進められても、ユリアで調達できる薬草には限りがあった。
調剤レシピは出来ても、実際の調合は出来ぬまま、時間だけが過ぎれいる状況だった。

しかし今は、どのような理由があろうとも、躊躇している暇はない!

研究がある程度完成ている。
安全が保障されているわけではないけれど、わずかに希望があるのなら・・・。

やるしかない・・・。

でも、それを行うのは一人ではない。

目の前に自分を信じてくれた人がいる。
そして、父を頼り、協力を求めてきた人がいるのだ。

ならば、希望を紡ぎたい、必要とする人の力になりたい!

ユリアは、すうっと深呼吸をして、そして、呟いた。


「・・・、私、王宮へ行きます!!」

それが、彼女の新しい世界の幕開けだった。