壁に背中をつけて

少し腰を丸めて前傾姿勢になって

その大きな手には携帯が握られていて

赤い瞳はその画面を見つめていた。


白に近い銀髪は春の風に乗ってふわふわとなびいて。

重力に逆らった髪型はいつも通りだ。


まだそんなに暖かいわけでもないのに

今日も半袖のワイシャツ姿で。


袖から伸びる腕はほどよく筋肉がついており


その姿は一瞬で私の心をわしづかみにした。



「おはよっ、ゆづくん!!」



『ゆづくん』


私にそう呼ばれたその人は、

つり上がった目をこちらに向けて口を開いた。