―ゆづのアパートにて―


「よし!!私もゆづくんにま負けずにおいしい料理つくるぞ!!!」


梓は、いつか買った料理本を手に取り

腕まくりをして

張り切った様子でキッチンに立つ。


「なになに?


『茹でた野菜を一口大に切って

挽肉を混ぜてフライパンで……』


洗い物多いな、別のにしよう。


『豆腐を茹でて…』


茹でるの多いな、やめよう。


『フレンチビネガーの…』


ない!他の!!


『素揚げにした…』


無理ですな」



ふう。


目を閉じ、小さく息をついた梓は料理本をぽんっと閉じた。


「ゆづくん」


そして、ソファでくつろぐ優樹に声をかける。


「あ?」


視線だけをこちらに向けた彼に、梓は料理本を見せた。



「これ、不良品だった!」



真顔でこう言うのだから、優樹はもちろん。



「………アホ」



呆れていつもの勢いなく、片手で顔を覆った優樹だった。








……………おしまい。