例えば、人生で一度過去に戻れるのなら。

私は迷わずあの日に戻る。


何もできずに棒になった脚を、無理やり動かして

貴方のもとに走って向かう。


貴方のちょっと古めかしい香りとエタノール臭が入り混じった、薄暗いあの教室に。


あの、理科室に。


そうして私は、迷わずこう言うんだ。


「ずっとずっと好きでした。」


そしたら今はもう少し変わっていたのかもしれない。いや変わっていないかもしれないけど。


けど、少なくとも。こんな想いなんかせずに。こんな冷たい雨が降りしきる6月に。





貴方の遺影なんか、見なくて済んだのかもしれない。


ただ、今の私ができること。


痙攣する唇をなんとか開いて、吐き出すようにつぶやく






あぁ、ちょっとまって