作った茶碗は、先生が釜で焼いてくれて、2週間後またこの会場で渡してくれるらしい。

どんな色目でどんな艶になってるかは当日のお楽しみだ。

マキに誘われてきてみたものの、かなり面白かった。

「陶芸、思ってた以上に楽しかったわ。」

帰り道、マキに言った。

「そうね。やっぱり想像通り。」

「何が?」

「先生。」

「陶芸の?」

マキは遠い目をしながら、一人にやけていた。

わわわ。まさかのまさか?

「ダンディで大人の落ち着きがあって、かわいらしさもあって、そしてひたむきで。私の理想だわ。」

「でも、今ひとつパッとしない風貌だったけど。」

「何いってんの!ちゃんと見た?めちゃイケメンだったのよ!あの眼鏡の奥の澄んだ瞳。ひきしまった唇!」

「べた褒めね。私はそこまでちゃんと見てなかったわ。そりゃおめでとう。」

「ほんと、やばいわ。男なんかいらないって思ってたけど、実は今回の陶芸、最後の賭に出たのよね。」

「将来に繋がる趣味探しじゃなかったの?」

「んなわけないじゃん!」

はぁ~。さようでございますか。

「陶芸教室のチラシに小さく載ってた先生の写真見た時、びびってきてたのよ。以前先生に教わったことのある友達からもかなりいけてる情報あったし、これは、もしかすると私の最後の恋になるかもしれないって。」

「よかったねぇ。」

マキのふわふわした前髪が風になびいていた。

「ほら、見て。」

マキはバッグから取り出して見せてくれた。

「これ、先生の名刺じゃない?いつの間にもらったの?」

「もう!チサがゆっくり手を洗ってトイレに立った時よ-。一か八か聞いてみたの。先生の連絡先教えてもらえませんか?また陶芸やりたくなったとき連絡してもいいですか?ってね。」

「すごい積極的なのね。」

マキの勢いに思わず飲まれる。

「だって、ここで連絡先聞かなかったら多分一生交わることないと思ったし。善は急げ!なのよ。わかる?チサ、あなたもよ!」

「あなたもよって。」

マキは意味深な笑みを浮かべて私を見た。

「恋、してるんでしょ?」