結婚適齢期症候群

「チサ先輩、突然憂さ晴らしに付き合ってだなんて、何かあったんですか?」

鶏皮を唇で引っ張りながら、ミユキが尋ねた。

「まぁちょっとねぇ。最近ショックな出来事が続いてて。凹んだ気持ちを断ち切りたかったのよ。」

「ショックな出来事?」

後輩からの相談事は色々と聞くけど、さすがに後輩に自分の悩みを相談することはできない。

ちょっとしたプライドなんだけど。

「ん、でも、大丈夫。今日、ミユキが付き合ってくれてるから。」

「何でも言って下さい。先輩のためならいつでも人肌脱ぎますよ!」

「人肌脱ぐねぇ。結構渋い言葉使うのね。」

「へへ。前に付き合ってた彼氏の影響かな。」

「彼氏?前っていつ?」

思わず食いつく。

確か、ミユキは、最近合コンで知り合った2歳上の彼氏がいるはず。

「二十歳の頃。高校の時の担任の先生と付き合ってたんです。」

「げー。嘘でしょ?」

一瞬引いたけど、ミユキに悪いなと思い何とか普通っぽい表情を作った。

昔から先生と名のつくものが嫌いだった。

先生って言うだけでえらそうっていうか、君たちとは違うんだみたいな空気が流れる。

先生も一人の人間のくせにね。

これもきっと私が今までいい先生と出会って来なかったからだと思うけど。

「先生っていくつ上だったの?」

「チサ先輩、マジで引いちゃうかも。」

「引くほどの年齢差なわけ?」

鳥肝を追加で注文して、ビールを一口飲んだ。