彼は迷いなく、慣れた感じで街を歩いていく。

ホテルから少し離れたところに地下鉄の入り口があった。

地下鉄に続く階段を降りていく。

「歩いていけなくもないんだけど、地下鉄乗ってみるのもおもしろいだろ。ウィーンって本当わかりやすい街なんだ。地下鉄もわかりやすいし、近場だったらトラムを使えばどこへだってすぐに行ける。」

「ふぅん。」

トラムって何?って思ったけど、聞いたらまた馬鹿にされそうだったから聞かなかった。

彼は二人分のチケット買うと、一枚を私に差し出した。

彼に続いて地下鉄の改札を通る。

こんなところではぐれたらえらいこと。

しっかりと彼の後ろをついて行った。

「どこに向かってるの?」

彼はふふんと軽く笑うと、「内緒」と言った。

どうせ、聞いたってわからないだろ?とでもいうような顔をしてる。

確かにわからないけど。

でも、知ってる場所かもしれないじゃない?

10分ほど地下鉄に揺られて、「降りるよ。」と言われた。

改札を出て、また地上に出る。

明るい日差しが目に差し込んできて、思わず目をつむった。

ウィーンのような落ち着いた雰囲気とはまた違う町並が広がっている。

でも、ここもそこかしこに花が飾られてとても美しい街だった。

しばらく歩いていくと、黄色い大きな建築物が現れる。

「ここだよ。」

「ここ?」

建物に近づいていく。

すると、突然開けた場所に出た。

「うわ、信じられない。」

思わず声が漏れた。

黄色い長い建築物の前にとても、考えられないくらい広大な庭園が広がっていた。

その先端はあまりに遠くて人の姿さえ確認できないほどだった。