しばらく行くと地下鉄の入り口が見えてきた。

地下鉄、か。

持って来た小さなバッグの中の小銭を確かめる。

地下鉄の往復代くらいはあるよね。

ふと、このままシェーンブルン宮殿に行ってみたくなった。

朝の宮殿はどれほど美しいんだろう。

そのまま地下の階段を下がって行った。

朝早いけれど、ウィーン在住のサラリーマン達が先を急いでいる。

ぶつからないようにしながら、降りて行った。

以前ショウヘイが連れて行ってくれた駅のナンバーを思い出す。

確か、ここだったよな。

ええい!どうにでもなれ。

コインを入れて切符を買った。

こんな朝早くから海外慣れしてない私が一人で地下鉄に乗ろうとしてる。

無謀な光景だな。

でも、できちゃうんだから不思議。

この街は時々私を大胆にしてくれる。

ちょっとだけ心配になって駅員さんに宮殿行きの電車は何時に来るのか尋ねた。

駅員は、もうすぐ来ますとだけ言った。

もうすぐって、えらくアバウト。

海外は日本と違って電車が遅れるのが当たり前って、ショウヘイが教えてくれたっけ。

気楽に行こう。

駅員さんの言うとおり、すぐに電車は来た。

電車に揺られる。

この場所の匂いも空気も全部大好きだった。

シェーンブルン宮殿のある駅にほどなく到着した。