そんな不愉快な奴の顔をにらみつけながら、

「じゃ、あなたはなぜここに1人で来たの?」

と尋ねる。

そのすぐ後に運ばれてきたフライドポテトは熱々だった。

奴から視線を逸らさず、はふはふしながらそのポテトを一口かじる。

「君って、見かけによらずよく食べるね。」

「見かけによらず?」

「痩せてるとかそういうんじゃないよ。チビなのにってことだけど。」

「悪かったわね、チビで。」

空になったジョッキを高く上げて、店長に見せた。

店長は「オッケー」とほっぺを赤くして笑いながら親指を立てた。

「それに、よく飲むよね。」

あ。

ご馳走になってるということもすっかり忘れて、何杯飲んだのかしら。

「すみません。」

思わずさっきの威勢がしぼんだ。

「いいんだ。飲める女性の方が、俺は好きだし。」

好きだし・・・。

初めて肯定的な意見を耳にしたわ。

そう言われたら、まんざらでもない気持ちになってる自分はやっぱり単純だと思う。

にこやかな店長が私の前になみなみと注がれたビールをドン!とおいて、彼に何やらこそこそしゃべると笑いながらまた戻って行った。

なんか気になる。

「何て言ってたの?」

「え?聞きたい?」

私はビールを片手に頷いた。

「彼女はさっきからよく飲むけど子供じゃないよね?だって。」

顔がかーっと熱くなった。

子供?

れっきとしたレディだわよ!!

「いやいや、大丈夫だよ。日本人はもともとヨーロッパでは幼く見えるんだ。それに君は背も低いからさ、余計。」

そう言いながら、奴は吹き出した。

すっかり彼のペースに飲まれて、さっきの私の質問には何も答えられてないことに気づく。

「そんなことはどうでもいいわ。あなたはどうして1人でここに来たの?」