しばらくして、そのハイヤーの扉から出て来たのは・・・

河村部長、その人だった。

ってことは、さっきの女性ってもしかして、もしかする?

親しげだったもん。

やっぱり?

一番見たくなかった光景。

会いたくなかった女性。


ショウヘイの元奥さん・・・?

心臓がドキドキしすぎて苦しい。

どうして、ここにいるの?しかも一緒の車で。

ショウヘイはこのこと知ってて、一人で今日は帰るって言ってたの?

あー、ネガティブ思考全開だ。

やばい。

窓から背を向けて頭を抱えた。部屋は真っ暗のまま。

ショウヘイと元奥さんは、まだ繋がってるの?

だから河村部長も再婚進めてるんじゃ・・・。

大きく深呼吸をした。

階段は、元奥さんの肩を借りて登ってるんじゃないのかしら。

だって一人じゃ難しいもの。

ショウヘイにまだ気持ちがある元奥さんなら、きっと介助するはず。

そして、そのままこの部屋の前まで来る。絶対付いてくる。

シンと静まりかえったところに誰かがこちらに向かってくる足音が聞こえる。

思わず耳を塞いだ。

私、ここにいて大丈夫?

玄関の鍵がカチャッと回る音がする。

「本当に大丈夫?」

扉の隙間から女性の声だけがすり抜けてきた。

「大丈夫だって。ここまで送ってくれてありがとう。」

扉がぐっと押し開けられて、玄関から廊下の明かりが差し込んだ。

思わずクビをすくめる。

「この部屋誰かいるの?」

あ。

玄関の私の靴、見られた?