「お前、いっつもそうだな。肝心な時に自分の気持ちを言わない。」

「そんなことない。」

「大事な時にいつも目を逸らして。言い訳ばっかして。」

「じゃ、言わせてもらうわ。」

思わず、ショウヘイの目をぐっと見返した。

ショウヘイは口元を軽く緩めて、そんな私の目をしっかりと捕らえていた。

「あなたは、再婚するかもしれないんでしょ?自分の仕事のために。それなのに、私にキスしたり、「好きだ」って言ったり、抱きしめたり、一体私はあなたにとって何なの?どうしていつも私の気持ちを弄ぶようなことするの?そんな私の気持ち、考えたことある?」

体中が熱かった。

「お前の気持ちなんか考えたことない。」

な、何言ってんの?

顔に熱が上昇する。

ショウヘイはやっぱり最初に出会ったようなクールで人の気持ちなんかお構いなしの自己中人間だった?

「俺は、自分の気持ちを正直に伝えて生きてる。」

「自分の気持ちを正直に伝えて生きてる?」

「だけど、お前は、全部人に寄っかかって、相手任せだ。」

そんなことない。全部相手任せなんてことはない。

ショウヘイと出会ってから、少しずつ自分で決めて、自分の気持ちに正直に生きてる・・・生きてる?

「結婚適齢期がどうだとか、この先どうなるの?だとか、人の気持ち考えろだとか。そんなこと言う前に、お前自身はどうなんだよ。今、お前はどうしたいんだよ。」

ショウヘイの語調は厳しかったけど、私を見つめる目はとても優しかった。

その優しい目に吸い込まれそうになりながら、ショウヘイが私に投げかけた言葉を頭の中で反芻する。

・・・今、私はどうしたい?

「今、私は、」

ショウヘイの細いけれどがっしりとした腕にそっと触れた。