結婚適齢期症候群

「結婚適齢期、結婚適齢期って、君はそんなに結婚したいの?」

少し目がすわってきだであろう私に、奴は余裕の笑みで聞いてきた。

「もちろん!今の私の最大の目標。」

私は大きく頷いた。

「最大の目標が結婚?くだらない。」

彼は皮肉っぽく笑うと、ビールジョッキをもう一杯店主に頼んだ。

「くだらない?」

私は前のめりになって食いついた。

「ああ、くだらない。結婚なんて、どこがいいんだ。配偶者に拘束されて自由が奪われる監禁事件みたいなもんだ。」

「自由が奪われる?監禁事件?なにそれ。」

「まぁ、結婚に幻想を抱いている君にはわからないだろうし、別に君が結婚しようがしまいが俺には関係のないことだから、これ以上この話はやめよう。」

何言ってんの?

そもそもそういう話を振ってきたのは貴様だろうが!

もうちょっとで捲し立てそうになった。

でも、しばらくはこいつにお世話になる身。

口が過ぎると、あの部屋から追い出されるかもしれない。

ゆっくりと深呼吸して、椅子に深く座り直した。

「じゃ、あなたは、結婚はしないのね。っていうか、しない方がいいわ。したら相手が気の毒だもの。」

ジョッキに手をかけていた彼が一瞬こちらを見た。

少し怒っているような目だった。

「俺は、結婚はしないよ。結婚に甘い幻想なんて全く抱けない。」

本当勘に触る言い方する奴。

結婚したこともないくせに、よくもまあいけしゃあしゃあと言ってくれるわね。

「私は必ずするの。最高の相手を見つけて、最高の結婚をするわ。」

「お好きにどうぞ。」

彼は小馬鹿にしたような顔で笑いながらビールを口に運んだ。