結婚適齢期症候群

「三十路?」

「そうですよ、先週30になりたてほやほやです。」

「そっか。」

彼はビールを一口飲むと言った。

「なら、30なりたてほやほやでわざわざこんな遠出するってことは、失恋でもしたか。」

・・・。

どうして、こうも女心をわからない人なんだろ。

ズバズバと、ちょっとは遠慮して物を言えって感じ。

しかも図星だし!

「失恋したように見えます?」

わざとらしくにっこり微笑んで尋ねた。

「単純な女だったら、そういう発想もありきだなと思って言ってみただけだ。君がそうかどうかはわからないけどね。」

・・・。

単純な女ね。

他力本願で単純。

いいとこなしじゃない?

まー、この案はマキの案であって、私の案ではないけれど。

だけど、それに思いっきり乗っかってるってことは私も同朋なわけで。

「まぁ、仮に君がそうだとして、30で失恋ってのは、かなり気の毒な話だけどな。女ってのはやたら年齢にこだわる生き物だから。」

「年齢にこだわっちゃ悪いですか?」

「いくつになったって、いい恋愛はできるさ。」

「でも、結婚適齢期っていうのがあるんです。」

「俺は、結婚適齢期って、いい恋愛をして結婚したい相手がいたときが適齢期だと思うけどね。若いからいいってもんでもない。」

「世の男性は、若い女性が好きなんですよ。結局ある程度の年齢がいった女性には、見向きもしない。もともと、結婚適齢期だって男性が作ったようなもんだわ。」

次第に口調が荒くなってきた。

どうせ、こいつも口ではいいようなこと言って、自分はちゃっかり若い女性と結婚するのよ。

ジョッキに残っていたビールをぐっと飲み干した。