ただ、ショウヘイと同じ場所に帰るだけではなくて、今自分が負傷中のショウヘイの役に立ってるっていうことも自分の幸福度を上げているように思う。

こういう感覚も自分にとっては新鮮だった。

例え恋人になれなくても、大好きな彼を支えることのできる唯一の存在であるっていうことだけで・・・。

午後からの仕事もスムーズに終えた。

朝、ショウヘイにしばらくはタクシーで一緒に帰ろうと言われていた。

その方がむしろ目立たないからって。

そんなに二人でいる場面を他人に見られたくないんだって一瞬悲しくなったけど、しょうがないよね。

一人に見られたら一気に社内中に広まって、あらぬこと言われるんだから。

しかも、ショウヘイは役員の娘とバツ一ほやほやで何かとにらまれやすい存在。

私も人事部ってだけで社内ではかなり顔が広いから、余計におもしろおかしく尾ひれはひれつけられて余計やっかいなことになるだろう。

それに、付き合ってるわけでもないし。

ショウヘイだって、私とどうこうなろうなんて思ってないかもしれないし。

この二ヶ月は、誰にも気づかれずやり通すしかない。

机の上を片づけていると、メールが入った。

ショウヘイからだ。

『あと15分ほどで帰れる。君は?』

すぐに返信を打った。

『私も大丈夫です。じゃ後で裏口に。』

こんなこそこそメール。ウキウキする。

ショウヘイの顔をちらっと見ると、向こうもこちらを見ていた。

目が合うだけでこんなにもドキドキする。

勇気を出して、少しだけショウヘイに笑ってみた。

ショウヘイは、無表情のまままたパソコンに視線を落とした。

・・・やっぱ、駄目ですか。

クール男子はどんな時でもクールに振る舞いますか。

まぁ浮かれ気分なのは私だけってことで。

ショウヘイは足首骨折して、大変なんだもんね。

本当に私に助けてもらいたくて同居の提案しただけ。

そう思っておかないと、この二ヶ月やってけない。