イケメン双子と、もちろん『腐』の付く愛され女子と。


 普段は体内へと収められている耳と尾は、ある特定の条件下では体外へと具現化してしまう。

 それは神の使いとして眷属に与えられた、神通力を行使する際に現れる。そして更に――

「我々神の眷属は、もとは野生の野狐でした。生を受け天寿を全うした狐は、命あるうちに如何と徳を積むかで、神として相応しいかが判断されます。

それから自我を無くし、無明と決別してこそ、眷属として神の力を得ることが出来るのです。ですから黒天は、我ら稲荷神としては少々毛色の異なる存在と言えるでしょう」

 それもまた言い得て妙であった。狐とは色が表すように、その多くはこんがりとフライされた、揚げのような色をしている。

 けれども黒天に至っては、名が表すように黒い毛並をしていた。髪の毛だけでない、飛び出た耳や尾も、瞳の色もすべて黒檀のように艶やかな漆黒をしていた。

「いえ……私が言いたいのは、毛並のことでは有りません。性格のことを言っているのです。黒天は直ぐに心を乱し、故に普段は現れることのない耳や尾が、具現化されるのです」

「へえ、神にも色んなタイプがいるんだ。聴いてるとさ、人間とそう変わらないって気がするんだけど。と言うことは……黒天ってさ、神のなかでは落ちこぼれってことだよね」