するとどうだ、それまで只のイカれた人間だと思っていた黒天は、四肢を震わせると頭部から大きな三角耳が、尻からはもふもふの尾が飛び出したのだ。
これには鉄に毛の生えた心臓を持つ凛も、目を丸くして瞠目してしまう。
「おい白天! 俺じゃなく、この穢れた人間を怒れよ。なんで俺が怒られてんだ」
「それは日頃の行いが芳しくないからでしょう。まずは神らしく、それに相応しい知性と受け応えを身につけることです」
「ぐッ……だが俺は間違いなく神だ」
それも尻すぼみな科白から鑑みると、少々疑いの余地はあった。
「ねえっつの!!」
「ねえ、さっきから僕のこと忘れてないかな。僕のお願いはどうなったの? それに足許の小さいのって、やっぱり仔狐なの? あと黒天だっけ、頭と耳から変なモノが生えてるよ?」
やはり凛の心臓には毛が生えていた。瞬時にして我に返ると、自称神と名乗る者に対して、堂々とつっ込みを入れたのだ。
「変なモノ言うな! これは俺が神の眷属である証し。無礼なこと言ってっと、マジでバチ当てるぞ」
などと、職権乱用する黒天は、やはり神としては疑い処が満載であった。
「だから俺は神だって!!」

