「さあ甘酒で身体も温まったし、そろそそ帰ろうか碧羽。今日は僕ん家に泊まるよね。ねえ泊まるでしょ? また子供の頃みたいに、寝るまでトランプしたりお喋りしたりしようよ」
またもや漸の追及には素気無く躱して、すっかりと話を変えしてしまった凛。けれども話題の変え処に無理があった。これには多分なる凛の欲望が、ひしひしと含まれていた。
「馬鹿かおまえ、碧羽と一緒の部屋で過ごす気かよ」
当然ながら凛は、漸に的を得たつっ込みをされてしまう。がだそれは凛のこと、言葉の抜け道も法の抜け道も、悪魔的頭脳を以って乗り切ってしまう。
「ひとつ屋根の下っていっても、家には母さんも居るし父さんだって居るんだよ? どんな間違いがあるって言うんだよ。そういうのをね漸、『むっつり』って言うんだよ? 青少年くん」
「んあ゛ッ!? なに言ってやがる、この悪魔野郎! ふざけたこと言いやがって」
漸が憤慨しながら凛を罵倒する。だけども弟の反応など想定内のこと、もとより痛くも痒くもない兄であった。飄々とした態度で、すべからく漸の神経を逆なでるのであった。
「ねえ何を言い合ってるの? わたしもう甘酒飲んじゃったし、お家に帰ろうよ。おばさんが待ってるよ」

