イケメン双子と、もちろん『腐』の付く愛され女子と。

 向かって左は白狐である和魂。その口には巻物がくわえられており、参拝者に知恵を授けるとかしないとか。


 対する右には黒狐である荒魂。その口には珠がくわえられており、もれなく参拝者に霊力を与えるとかなんとか。

 また春日造の大層立派な拝殿には、その両脇に子狐の狛狐が安置されており、其々が鍵と稲穂をくわえている。稲は豊かなる富を、鍵は珠の力を引き出す重要なアイテムだ。

 拝殿の奥には本殿があり、御利益必須な翡翠ヶ丘の守り神である、御神体が奉納されている。

「わあ美味しいねえ」

 碧羽たちは無事に参拝を済ませると、境内に屋台を構える甘酒屋へと居を移した。毎年同じ場所へと出店している、ここの甘酒が碧羽はお気に入りなのだ。

「ふふふ、よかったね。碧羽は甘酒が好きなんだ。なら家に帰ったら、僕が碧羽に甘酒を作ってあげる。うんと甘くしてね」

「ほんとに? 凛が作ってくれるんだ。嬉しい♪ でも甘さは程々にしてね」

「そっか。女の子だもんね、カロリーが気になっちゃうよね」

「違うだろ! てめえの作るモンなんて、歯が浮くぐれえ甘めーっつってんだよ」

 凛の間違った認識を、きっちりと改める漸であった。