祈り終わった碧羽と漸は、凛をうかがってみる。するとどうだろう……なにやらどす黒い、オーラ的な何かを放っているではないか。
目を見開き、社に安置されている御神体に眼をつけるようにして、ぶつぶつと何かを呟いている。そのすがたは願いを乞うというより、神に喧嘩でも吹っかけているような有り様だ。
よっぽど思うところがあるのだろう、日頃の行いの悪さを懺悔しているのか、それとも素行の悪さを悔い改めているのか。将又(はたまた)生きる意味を見出そうと、無心に加護を乞うているのか。
「……ねえ、そのナレーションじゃ僕って、よっぽど良いところがないじゃない」
残念ではあるが、いくら探してみても、彼に良いところなど見つかるはずもなかった。
「お祈りは済んだ?」
「ああ、うんお待たせ。あのね、僕の大切な碧羽の幸せや、僕たちの明るい結婚生活やら、たくさん祈っちゃった。ねえ碧羽は何を祈ったの? 僕のことだったら嬉しいな――」
「ひみつ。ひとに話すと、叶わなくなるんだよ?」
「……え?」
碧羽の言葉を聴いて、凛は遠い世界へと旅立ってしまった。
「ぶはッ! ばっかじゃね」
固まる凛を見て、漸はとても楽しそうだ。そこに来て新年早々、仲の良いふたりを拝むことができた碧羽は、『今年もふたりと一緒に笑い合っていられますように』と、心のなかで願うのであった。

