眠りに落ちる寸前。
微睡む私の目の前に、突如としてそれは現れた。

夢のようで夢じゃない。

それは数時間前に妙に脳裏に焼き付いたシルエットだった。





関くんの隣りを歩き、心臓がバクバクなって破裂しそうだったあの時。
一瞬チラリと視線をずらした時にそれを見つけた。

川の流れが緩やかで、小石が所々剥き出しになっているその場所に、たった1人、花火をしている人がいた。

関くんは天体観測しながら、夢中で星座について話していたようだけれど、その時だけは、彼よりその怪しい人影が気になって、彼の声が聞こえなかった。


私にとってその人は違和感でしかなかった。



どうして花火大会終了後にたった1人で花火をしているのか。

どうしてわざわざこの場所を選んだのか。

一緒にやってくれる人はいなかったのか。



私の頭上には疑問符が次々と浮かんでいた。



しばらく見ているうちにその人は線香花火ばかりをやっていることに気づいた。

先っぽの火は膨らんだと思ったらすぐに落ち、パチパチという可愛らしい音を立てて輝く姿を私は余り見たことが無い。

何度やってもうまく行かなくて、そのうち在庫切れになってしまう。

長く持たせようと試行錯誤するも、上手く行かないんだ。




「晴香ちゃん?」



自分でもびっくりした。

私は歩みを止めて河原をじーっと見つめていたのだから。

まるで吸い寄せられるように…














あの人はあの後どうしたんだろう?



眠かったはずなのに、その奇妙な出来事を思い出し、覚醒してしまった。

仕方なく電気を付け、夏休みの宿題を取り出す。

しかし、それも手に着かず、ノートの端に今日見たものを描く。

遠目から見ていたから曖昧だけれど、
身長は私よりは高かった気がする。

線が細くて痩せ型だったと思う。



描き終えてペンを置く。



その絵から言いようの無い孤独を感じた。



―――知ってる。

私は、知ってる。

孤独というものの深さと暗さを。



妙に親近感が湧いた。



顔も分からない。


性別も分からない。


年齢も分からない。


名前も分からない。


本当になんにも分からない。






なのに、



なのに、



なぜか、



本当になぜか、



会いたくなった。



その人に。








平易な言葉では言い表せない感情が胸に迫ってきて呼吸が一瞬乱れる。

今まで感じたことの無い類の感情。

炎のように熱くて、氷のように冷たい。



会いたい。

話したい。



自分と重なりそうなその人に…






私は力無く布団に倒れ込んだ。





午前2時12分41秒。

何かが私を連れ去った。