「…そう。」


「じゃあ、行くね…!」


陽亮が悲しそうな顔をしたのに気付かないふりをして陽亮から逃げた。


「あ…お礼言ってないや…。」


準備室でビニールと絵の具を探ししながら呟く。


助けてくれたお礼も言わず焦って逃げて来てしまったことに気づいた。


教室に戻ったらちゃんと言わないと…。


「よいしょっ…と」


ダンボールにビニールと絵の具を入れて持ち上げる。


ちょっと重いな。やっぱり千夏に着いてきてもらえばよかったかも。


そう思いながら準備室を出た。


「重そうじゃん。」


「わぁ!!」


突然声が聞こえてビックリして持っていたダンボールを落としてしまった。


「ははっ!そんな驚く?」


「陽亮…」


床に散らばった絵の具を見て陽亮がケラケラと笑う。


「なんで…?」


「手伝いに来たんだよ。千夏に聞いて。なのにお前先行っちゃうから。」


ぶーっとほっぺを膨らまして拗ねている陽亮に思わず笑ってしまった。


「あー!何笑ってんだよ!早く片して行くぞ。」


そう言って散らばった絵の具を拾い始めた。


私もしゃがんで拾う。


「…さっき、逃げちゃってごめん。助けてくれてありがとう。」


ちゃんと言わなきゃと思ったのにだんだん語尾が小さくなる。


「気にすんなよ!俺、野球部だしあんなの朝飯前だぜっ!」