「アヤさー、まじで来るかね?」


ピタッと足が止まった。


思わず階段の影に隠れる。


「いやまさか!普通来れないよ!」


「前からアヤってなんか違うなって思ってたんだよね」


「あー、わかる。ヘラヘラしてるだけみたいなね!」


「一緒にいても楽しそうじゃないし」


サーっと頭が真っ白になった気がした。


上辺だけだと思ってたのに凄く悲しい。


1年間必死に作って築き上げたカトリ アヤが目の前で音を立てて崩れた。


「うわ!ミカ傘忘れたー!」


「なんか適当に借りパクしちゃえよ!」


「あ、これアヤのじゃん?持ってっちゃえ!」


「うわー笑 アヤどうやって帰るんだよ」


「大丈夫でしょー!オトモダチがいるじゃん。


てかアヤなら“アヤは大丈夫!ミカが濡れなくてよかったー”とか言うでしょ」


ケラケラとみんなが笑いながら雨の中に消えていく。


私のことなんて待ってなかった。


それどころかあんな風に思われていたなんて。


悲しくて悔しくてそれ以上にこんな自分が情けなくてその場に立ち尽くした。


「綾?」


「…千夏」


千夏の声がして振り向くと陽亮と伊月も立っていた。


ズキン、ズキンと胸が痛い。



「綾、誰か待ってんの?」


「ううん。違うよ。」


伊月に聞かれて首を横に振った。


でもどうしてもうまく笑えなくて俯いてしまう。


しばらく沈黙が続いた後、また伊月が口を開く


「綾、この後予定は?」


「え…?もう、特にないけど…。」


みんなは私じゃなく、私の傘を連れてカラオケに行ったから。


私がそう言うと3人はニヤニヤし始めた。


「じゃあ決まりだな」

「行くか!」

「行こう行こう!」


陽亮と伊月にガシッと腕を掴まれた。


「え!?」


そのまま引っ張られるように昇降口へ向かう。


「ちょっと待って!私、傘…」


「なんだ、綾傘ないの?」


「…うん。」



「なら仕方ないな。」


陽亮が傘立てに向かって歩いた。


もしかして、陽亮たちも勝手に人の傘を…?


「あったあった!」


黒い一本の傘を傘立てから引き抜くと陽亮は外へ出た。


「俺の巨大傘に入れ!」


陽亮の傘は本当に大きくて2人余裕で入れる大きさだった。


「え!でかっ!」


「だろぉ〜!さぁ行くぞ!!」