言葉にして

 自分はなのかの友達だと言い張る新菜に対して、拓人は邪魔をするなと言い返す。
 互いに少しも譲ろうとしない二人を見て、なのかが声を出した。

「新菜」
「 何?」

 新菜はなのかに顔を向けた。

「私、二人で話す」
「でも、なのか・・・・・・」
「大丈夫」

 心配する新菜に笑みを浮かべて頷き、拓人と店を後にした。
 拓人の家が近いので彼の家にお邪魔する。
 いつもと違った空気が流れて、落ち着かずそわそわしていると、ソファに座るよう拓人に促された。

「さっき、新菜からLINEが送られてきた。今日のこと」
「そう・・・・・・」

 一度、新菜が席を外したので、そのときに連絡したに違いない。

「俺、浮気なんてしてない」

 正面からはっきりと否定する彼を見て、思わず息を呑んだ。
 今日拓人は仲の良い同僚とカラオケ店で時間を過ごしていた。
 飲み物を取りに行こうとしたとき、高校のときの同級生と偶然会った。
 そのとき好意を寄せていることを彼女から聞いて、連絡先を教えてほしいと頼まれた。
 断ってもしつこくついてくる上、馴れ馴れしく腕にしがみついてきた。
 だから浮気じゃないと一通り拓人の話を聞いて、なのかは納得した。

「わかった」

 僅かに目を見開いた拓人はじっとなのかを見た。

「あのさ・・・・・・」
「ん?」
「もっと言葉にして、言いたいことを言ってくれ」

 なのかは拓人が何か話したりするとき、いつも頷いてくれる。