トラ子さんが毛を逆立てて、シャッーと私を威嚇する。
安易な名前の付け方が気に入らなかったか、または性別を間違えたことに対する怒りだと思われる。
ごめんね、トラ子さん。
やたらと風格がありすぎて、ボスと呼ばれてても違和感なさそうだったから、つい。
「それにしてもこの猫、野良猫にしては人懐っこいというか、手入れも行き届いてますよね」
「生徒の飼い猫かな?」
「……ありえそうですね、この学校なら」
私たちが通う桐生院高校は、お金持ちしか入れない特別な学校だ。
生徒たちの親はみんな、名の知れた大企業の会長だったり、セレブな芸能人だったり、政治家だったり。
とにかく各界を席巻するような人たちばかりだ。
そんな親を持つ子供たちが全国から集まってくるわけだから、学校側の配慮はとんでもなくすごい。
まず、学校の敷地面積は言わずもがなでしょ。
校舎内の暖房設備は完璧だし、サロンやジム、グラウンド横には温室まで存在する。
他にも、学校と銘打っているものの、到底学校とは思えない、様々なものが完備されているのだ。
そして最大の特徴が、「校則がない」ことにある。