side遠子



にゃー。


と、猫が鳴くので。



「にゃぁー」



と、真似をして鳴いてみる。



……返ってきたのは、猫のシラけた視線だった。



「人間如きが鳴き真似をしようとは、百年早い。って言ってるように見えますね、この猫」



隣で一部始終を見ていた輪くんが、何だか呆れたように肩をすくめて、そんなことを言う。



一般的な猫よりも体格の大きい、悪く言ってしまえば太っているその猫は、実にふてぶてしい顔で輪くんの膝の上にうずくまっている。


気のせいか、輪くんの言葉に同意しているようにも見える。



「……輪くん、本当にその猫に好かれてるよね」


「そうですか?俺としては、先輩が懐かれなさすぎだと思いますけど……」


「うっ」



確かに、お世辞にも動物に好かれる体質だとは言えない。


だけど、輪くんの膝の上でくつろぐトラ柄の猫は、特別私を嫌っている気がする。



何かした覚えはないのに、どうしてだろう。



「トラくん、冷たい~っ」


「トラくん?」


「そう、この子に名前をつけたの。どうかな?」


「えっと。先輩たぶんこの猫、メスだと思います」


「……じゃあトラ子さんで」