「いったぁ!ちょっと、どこ見て歩いてんのよ!!」


「ご、ごめんなさい」



ぶつかった女子生徒は少しだけよろけて、ぶつかった肩を押さえて声を荒らげた。


慌てて謝るも、女子生徒は私の顔を認識した途端、嫌な笑みを浮かべる。



「あ、矢敷さんじゃーん。裏切り者の。生徒会の皆さまに相手にされないからって、人に八つ当たりするのはどうかと思うなぁ、あたし」


「え……?」


「暴力反対!マジで痛かったし。痣になったらどうしてくれんの~?わざとじゃないなら、きちんと謝って誠意見せてよね」


「誠意って」


「土下座に決まってんじゃん」



さっと血の気が引く。


彼女は何を言っているんだろう。



「頭を地面に擦り付けてさぁ、申し訳ありませんでした!って。早く言えよ。あたし優しいから、それで許してあげる」



土下座なんてできるわけがない。


懸命に頭を横に振る私に、女子生徒は苛立ちをあらわにまくし立てた。



「何?土下座もできないの?ホント高慢な女!てゆーか、今まで厚かましく生徒会に居座っておきながら影で裏切ってたあんたが、まだこの学校にいること自体、信じられないんだけど。どんだけ厚顔なわけ?!」


「っ」



胸元を掴まれる。


気道が圧迫されて、苦しくなる。



「り、りん、く……」



助けて―――



そう、助けを求めたとき。




「―――何をしている?」




聞き覚えのある声が、した。