教室に戻ると、生徒たちの悪意に満ちた視線に晒される。
輪くんといた中庭でのことが嘘のように、ここで私は裏切り者の名前に相応しい扱いを受ける。
「また……」
机の中に入れていた教科書が、ない。
ついこの間も同じことがあって、新しいものに変えたばかりなのに。
また買い換えなきゃいけない。
ああ、面倒だな……。
そのとき、クスクスと笑う声が聞こえた。
教室の隅で、女の子たちがこちらを見ながら笑っている。
……犯人はきっと、彼女たちに違いない。
けれど、直接文句を言う勇気もない私は、彼女たちから視線を外して逃げるように教室を出た。
今日はちゃんと授業に出席するつもりだったのにな。
やっぱり教室にいるのは怖い。
輪くんがいないと、本当に私はダメな人間だ。
息をすることすら、難しい。
廊下にいるみんなが私を見て笑っているような錯覚を覚え、俯き加減に歩いていたのがいけなかったのだろうか。
―――廊下を曲がった直後、人にぶつかってしまった。
