ひよりは、私の腕をつかんでパーフェクトマッスルが行く道とは真逆の方向に私を引っ張る。


「ちょっ……」

「ん?」


そんなひよりに力なく抵抗した私。

だってパーフェクトマッスルが向こうに行っちゃうんだもん!!

さすがにこれには不思議に思ったであろう彼女は、再び怪しい者(実際には超怪しい自覚はある)を見るように、その目を細めた。


「今日のあず、おかしい。いつもおかしいけどいつも以上におかしい」

「おかしくない!! あといつもおかしくない!! もう!!」


本当、失礼しちゃう!!

私はさっきまで見えていたゆづくんの背中が見えなくなったことで諦めがつき、それと同時にひとつため息をついた。

仕方ない……ひよりは勘が鋭いから昼休みのゆづくんの筋肉ストーカーは諦めよう……無念。


そしてひよりと一緒に購買への道を歩きながら、私は考えていた。


私がここまで完璧な筋肉を描くことにこだわる理由。

ゆづくんの完璧なまでの筋肉に惹かれる理由。

あのパーフェクトマッスルにここまで執着する理由。



私……今まで気づかなかったけど……。



―――筋肉フェチなんだ…!!!!


私、和泉 梓(16)、本日よりオトナの階段をのぼり始めることになりそうです。