「ひ、ひより」


黒髪のロング…それもストレートでサラサラな美女:雫石 ひより。

大好きだけどその美貌が憎らしい、私の幼なじみです。

私が絵を描くことが好きだけど、漫画家志望を諦めたことも知っている唯一の存在。

あれ以来、応募を勧めてくることもなくなって。

ひよりなりに気を遣ってくれているのでしょう。


……って、今はそれどころじゃない!!



「びびびびっくりしたじゃないか!」


本当にびっくりした私は、片手を自分の胸に当てて何度か深呼吸をした。

しかしひよりは、不審者でも見るように目を細めて私を見る。


「なにしてんの?」

「えっと筋肉スト……ではなく!!」


だっはああ!!

だめだめ!!

ゆづくんの筋肉のストーカーをしてるなんて口が裂けても言えない!!

いくら私の過去の八割五分二厘を知っているひよりでも!

いくら美人でスタイルのいいひよりでも!!

これだけは言えない!!

なぜなら100%「バカじゃないの?」って言われて引かれるから!!!


「筋肉スト?」


不思議そうに首をかしげて、うっかり出てしまった私の言葉を繰り返すひより。

……これはまずい。

非常にまずい。

変な汗が出てきた。


「あ、えっと…そう!!」


私は壁に両手をつき、片足を後ろに伸ばしてアキレス腱を伸ばす体勢をとった。


「筋肉ストレッチ!!!」


ってさすがにこれは苦しいか…!?


「………よくわかんないけどバカなことしてないで、購買行こ」


そしてさらっと流された!!!!!

(で、やっぱりバカって言われた!!!)