*梓side*

「ま、ざっくり話してこんなとこか」


淡々と告げられたゆづくんの家庭事情。

それを聞いて、私はどんな顔をしていいのかわからなかった。


「……ゆづくん、なんで私にそんなつらい話を……」


そんなの、誰にだって言える話じゃない。

私の家庭は、特別なことはない、どこにでもある普通の家庭だ。

だけどそれが、その普通な家庭ということが、つくづく幸せなことなんだと思い知った。


「……お前が、聞きたそうにしてたから」

「え」

「なに、しみったれた面してんだ」


パコンと軽く叩かれる。


「別に俺は、なんとも思ってねえ。

だからテメエに同情される覚えもねえ」


「……ゆづくん、」


強いなあ……


「話してくれて、ありがとう」


この場合、笑えばいいのかな。

だけど笑ってしまったら、不謹慎じゃないかな?