「てめえ動けるんならさっさと準備しろノロマが」
「………のろま…」
「和泉さん。彼、口は悪いけど結構良い子だから…気にしないでね」
ノロマと言われて石化していた私に
先生が小声でフォローを入れてくれた。
気にしないでねって…そんな申し訳なさそうな笑顔で言われてもさすがに初めてかけられた言葉が『のろま』はさすがに傷つきますって。
「それじゃあ優樹くん、和泉さんのことよろしくね」
まだ少し重く感じる体を動かし、ベッドから足を降ろした。
だって16歳のいたいけな乙女ですよ?こんな地味な格好してますが。
メガネだって一応かわいいものを選んでかけてるつもりで……
「さっさと行くぞメガネ女!!」
「メガ……っ!?」
その言葉で私はぴしっと固まるも、ゆづくんはもちろん傷心中の私なんか気にすることなく、足で強引に保健室のドアを開ける。
そんなゆづくんの勢いに引っ張られるように慌ててその後を追った。
「先生、ありがとうございました! ま、待ってゆづく……」
「ああ!?」
「ひ」
お、鬼の形相……!!
そんな形容が正しいと思えるくらいの表情で、ゆづくんは振り返った。
くわっと口を開けて、牙もばっちり見えている。
まるで鬼だ。
というか、ゆづくん?
そんなに私と帰るの嫌ですか!?



