帰ったら、お兄ちゃんに心配された。サエがお兄ちゃんに、あたしのことをメールしたみたい。



「本当に何もされなかったのか!?」

「う、うん。助けてもらったから……」

「よかったあ〜! でも、今度から何かあったらすぐにオレに連絡しろよ!? 仕事中でも、風呂入ってて全裸でも駆けつけるから!」

「あはは……」



お兄ちゃんの心配性っぷりには少し呆れてしまう。

でも、仕方ないか。



あたしはお兄ちゃんと二人暮しをしている。

あたしの通う高校に、お兄ちゃんの住むマンションの方が近いからだ。

それにあたしの家は、お母さんが小さいときに離婚して出て行ってしまい、今はお父さんとお兄ちゃん、そしてあたしの三人家族。



仕事で忙しいお父さんの代わりに、あたしをかわいがってくれたのが、歳の離れたお兄ちゃんだったんだ。



だから、お兄ちゃんというよりもう一人のお父さんというか――

とにかくあたしのことを、本当に大切にしてくれている。



「それにしても、例の北村くんって奴にも気をつけろよ」

「え!?」



サエってば、どこまで話してるの!?



「今回は助けてくれたみたいだけど、アイツみたいに優しく見えてクソヤローだっているんだ。もう絶交してやったけど、本当に、浮気なんて最低だ」

「う、うん……そうだね……」



クソヤローというのは、間違いなく元彼のことだろう。



お兄ちゃんは、浮気が大嫌いだ。



あたしは覚えていないけど、お父さんとお母さんは、お母さんの浮気が原因で別れたらしい。



お兄ちゃんはそれをずっと忘れられなくて、あたし以外の女の子をあんまり信用していない。



だから、お兄ちゃんは結構カッコイイし、仕事もしっかりやっているのに、彼女を作ったことが一度もない。



あたしが色々考えて黙ってしまったら、お兄ちゃんは突然手をパン! と叩いた。


「よし、じゃあご飯にするか! 今日はミキの好きなチキン南蛮だからな〜♪」



お兄ちゃんが鼻歌混じりにご飯の準備を始める。あたしも一緒に手伝って、一緒にテレビを見て、大変な一日もいつの間にか終わっていた。