結局、アヤシイ店員さんの言っていた通り、あのベルは火災検知機の誤作動で、火事なんて起きてなかった。

あたしはサエとカンナに怖い人達がいたことを教え、火事騒ぎのどさくさに紛れて二人とカラオケを離れた。



ヤンキーが入ってこられないような、かわいい系のカフェに入って、あたしは店員さんの話をした。



「それ、北村じゃない?」

「北村?」



サエは心当たりがあったらしく、あたしに一人の男の子を教えてくれた。



「そう。二組の北村……なんだっけ、下の名前。忘れちゃった。でも、くるくる髪で眼鏡で、ミキのこと知ってそうな奴なら北村くらいじゃない?」

「あたし、話したことない……」

「ミキはかわいいからね! ミキは知らなくても、北村はミキのこと知ってるでしょ〜」



サエが笑うと、カンナも頷いた。あたしはぽかんとしてしまう。



元彼が年上だったから、あんまり、同い年の男の子を気にしたことがなかった。



皆こどもっぽくて、元彼みたいにエスコートも出来なさそうだったし……。



「北村、陰キャで気にしたことなかったけど、いいやつじゃん! てか、さっきのウソ火事も、北村のしわざじゃない?」

「ヤバ〜い! でもちょっとキモくない? ミキのこと見てたってこと?」

「き、キモくはないよ!」



あたしは思わず大きな声を上げてしまった。



「キモくないよ……だって、すっごく怖かったし……あたしだけじゃなくて、サエとか、カンナも連れて行こうとしてて……、あたし、何も言えなくて、動けなくて……」



思い出すだけで、手のひらが冷たくなる。



あの二人の、あたしをじろじろ見る目……

本当に、怖かったんだ。



「み、ミキ〜! 泣かないで! わかったからあ」

「そうそう、あたしらのこと考えたのね〜、イイコイイコ♡」



サエとカンナの手が伸びて、あたしは頭を撫でられてしまう。



「もお〜、バカにしてるでしょ!」

「してないって♪」



そのまま北村くん? の話を少ししてから、あたし達は解散した。