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「やっとお昼だあ〜」

「はいはい、よく頑張りました♪」



勉強はやっぱり苦手で、お昼休みにもなれば、あたしはくたくただった。

カンナが優しく撫でてくれるのが、心地良い……



でも、北村くんを見たからかな。ちょっとだけ、元彼のことは忘れられたので、そこまでブルーにブルーを重ねられることはなかった。



なんてお礼を言おうか考えていたら、元彼のことがどっかにいっていたんだ。



「ミキ、カンナ、はやくご飯しよ〜」

「賛成! お腹空いたあ」

「もう、サエもミキも食べることばっかなんだから……」



あたしの席を中心に、いつもの三人で集まる。お弁当を広げれば、いい匂いがあっという間に広がった。



「ミキのお弁当、今日もお兄さん?」



カンナに尋ねられてあたしは頷いた。今日は色とりどりの野菜と、チキンやエビが挟まったサンドイッチが、大きめのお弁当箱に詰め込まれていた。



「そうだよ〜。最近はサンドイッチブームみたい……。ちょっと多いから二人も食べて」

「やった♪ ありがたくいただきま〜す♪」

「ありがとう。じゃあ一つ貰うね」

「どうぞどうぞ〜」



二人と一緒にサンドイッチを手にして、一口……



たっぷりの野菜と、プリプリしたエビと、お兄ちゃん特製のソースがとっても美味しくて、お店の味みたいだった。

さすが、凝り性なだけある。

それに、お兄ちゃんは料理が結構好きみたいで、よく色んなレシピ本を買ってきては試している。



「はあ〜、おいしい……。ほんと完璧過ぎでしょ、ミキのお兄さん!」

「すごいよね、ミキのお兄さん。非の打ち所が無さ過ぎる……」

「そんなことないよ! お兄ちゃん、女の子はちょっと苦手だしね」



二人があまりにもお兄ちゃんを褒めちぎるので、嬉しい反面少し恥ずかしくなってしまう。

それで、思わず照れ隠しにお兄ちゃんの弱点を口にしてしまったら、二人は苦笑いを浮かべていた。


「ほんとにもったいないよね……」

「それ〜。おまけにミキのこと大好きでしょ? あたし、お兄さんちょっとイイナ〜て思ったんだけど、ミキと一緒にいるお兄さん見たら、なんか……負けた」

「ミキに?」

「いや……むしろお兄さんに? というか、お兄さんのミキ愛に……。ちょっと悔しくなった!」

「や、やめてよ二人とも……」



お兄ちゃんの話は、いつもなんだかくすぐったい。

自慢の家族だし、褒められるのは嬉しいんだけど……やっぱり恥ずかしいかも!

大切にしてくれているのは、わかってるんだけどね……