そう簡単には、いかないんだと思い知らされる。




一気に現実に引き戻された。




「出ないの?」




『あ、出るよ。』




出たくない、出たらこの幸せな瞬間は終わってしまう。




『もし、もし
成さん?』




「葉月随分遅くないか?」




やっぱり、昔から成さんは勘が鋭いな。




『今から帰るよ。』




「わかった。気を付けて」




帰らなきゃ、成さんが待っているあの家に。




『ごめん、家に帰らないと。』





「葉月って成兄と一緒に住んでるの?」




成兄っていうのは、成さんのこと。
昔から翔は、成さんによく懐いてた。




『そうだよ、』




きっと、それを知ったら翔は会いたがるから。


知られたくなかったのに、




「俺も行っていい?
久しぶりに成兄に会いたいし。」




やっぱり、会いたがるよね。
ここで嫌がったら変だよね?




『いいよ、昔から翔は成さんが好きだよね〜』