できることなら会いたくなかった相手だけに、気後れしてしまう。
「大丈夫ですよ。前みたいに誰かが待ち伏せ、何てことありませんから」
「……」
大丈夫と言われたところで素直に安心できるわけもなく、私は教室から動こうとはしなかった。
「ふーん。少しは学習したみたいですね。でも今回は本当に痛めつけようとかは考えてないんです。あの時は二人の愛をさらに深めちゃったみたいですから、今回は徹底的に。誰も居ない所の方が先輩にとってもいいと思うんですが、ま、幸いこの教室にも誰もいないことですし、早速本題に入りますね」
そう前置きをした麗子ちゃんの瞳は、あの時にも増して鋭く光っているように思えた。
「明日ですが、翼は来ませんよ」
「…っ、どうして」
「どうして知ってるのかって?昨日翼の部屋に行ったんです。そしたら旅行にでも行くみたいに鞄にいろんなもの詰め込んでて、問い詰めたら家を出て行くって。そんなこと許せるわけないじゃないですか。まあ、確信はなかったけど、先輩の反応を見て分かりました。二人でだなんて尚更許せない。だから教えてあげたんです。翼にも叔父様たちにも」
