二人が出会ったきっかけは

予期せぬリリーさんのピンチだった。

____________________ *Lily.side

その朝は随分と平凡で当たり障り無いいつもの朝だった……

___ある『夢』を見たこと以外は。

ただ『夢』の詳しい内容は全く憶えていない。

が、ある言葉?呪文?は憶えている。

その呪文とは____________


『汝の願いが叶う時、我が願いは叶うだろ

う。汝が力を望む時、我は汝の力となろう。

やがて、願いは祈りへ、力は想いへと姿を変

え、すべて我らを縛る運命とならん。』


___何の呪文なのかはさっぱり憶えていな

いけれど、大切な、忘れてはいけない呪文だ

と言うことはわかる。

憶えてはいないけれど、その呪文に込められ

た想いが、そう語っている。


それでもまだ、朝はいつもと変わらなかっ

たのだ、

そう、"朝" は。

まだ。
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___昼休み。

私は昼食後なにをするでも無く、

屋上からただ外を眺めていた。

中庭には大樹が葉を広げており、

木陰ではたくさんの生徒達が

楽しそうに

喋 って い る。

そ の葉 は


そ よ そ よ と



風 に ゆ れ て い る 。


……?



__ビリビリと震える気配を感じた。

瞬間。

「グルァァァアアアアアアアアアッッ!?」

「……キヤァァァアアアアアアアアッッ!?」

咆哮と少し遅れて悲鳴が聞こえてきた。

私はすぐさま運動場側へ走った。

そこで目に映ったものは……


「ド、ラ、ゴン?」

__そう。

私の目の前には、

土埃の中、

翼をバサバサと羽ばたかせて風を起こし、

鬱陶しそうに土埃と人間を追い払う

緋色の炎を目に宿した

赤い

___ドラゴンが居た。

流石の私でも驚きを隠せずに固まっていると

ドラゴンが羽ばたき、空へ飛んだ。

そして、そのまま空中を旋回し始めた。

ドラゴンはこの状況に納得が行かないらしく

、不機嫌そうに鼻を鳴らしている。

その時、

ドラゴンが空中で静止して

ホバリングを始めた。

あきらかに

『面白いものを見つけた』

と言った顔で。

更にいえば、

ドラゴンは屋上……私を見ていた。

「どうしよう……。」

ドラゴンは私を見て、身に纏う炎の大きさを

大きくし、あきらかに好戦的な目でこちらを

見ている……が、当たり前だが、

私は魔法が使える訳ではない。

しかも、運動はあまり得意ではないし、

第一この距離で、

物理攻撃が届くとも思えない。

なので、ドラゴンに目を向けられても、どう

したらいいか分からず、困惑するばかりなの

だが……。

「あ。」

私はそこで思い出した。

そうだ、忘れてはいけない

あの『呪文』が私にはあるじゃないか!

普通に考えれば、あの呪文などただ夢に出て

きたものの一つに過ぎない。

でも、その時の私にはその『呪文』が

とてつもなく重要で、

大切な希望に思えたんだ。
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